レポート2019.04.20ろう者も聴者も大人も子どもも関係なし!手加減なしの高難度脱出ゲームに“異言語”で挑戦
4月20日(土)、那覇市の沖縄ラフ&ピース専門学校で異言語脱出ゲーム「蒼海に眠る秘宝の謎~月夜の邂逅~」が行われました。
異言語脱出ゲームは、一般社団法人異言語Lab.が行なっている、手話、筆談、音声などを組み合わせ、「伝え合う」ことを通じて問題を解く、新しいスタイルの脱出ゲームです。手話と音声言語という“異なる言語”を使うろう者・難聴者と聴者がひとつのチームを組み、音を聞かないと解けない謎、手話を知らないと解けない謎の数々を、協力しながら解き進んでいきます。
これまでも異言語脱出ゲームとよしもと芸人はコラボレーションしてきましたが、今回は“海の声に耳を傾けること”をテーマに、「島ぜんぶでおーきな祭」にあわせて書き下ろされた新作です。
一般参加のお客様たちと一緒に、次長課長・河本準一、NON STYLE・井上裕介、尼神インター、ガンバレルーヤが参加。芸人それぞれが6つのチームに別れ、ろう者・難聴者3人、聴者3人の6人組となって謎解きに挑戦しました。また、クイズを出す側の出題芸人としてしずる、ハリセンボン・箕輪はるか、大屋あゆみをはじめとする劇団アラマンダのメンバーが参加しました。
ゲーム開始前には、手話を取り入れた喜劇を演じる劇団アラマンダの座長でもある、よしもと沖縄芸人の大屋あゆみと、異言語Lab.代表理事の菊永ふみさんから、企画の説明と簡単な手話のレクチャーが行われました。筆談、身振り、手話を使って“思い切り全力で伝えること”が重要だと菊永さんはポイントをアドバイスしてくれました。
まずは各チームでテーブルを囲み、名前、出身地、趣味など自己紹介を行いました。聴者が筆談で自己紹介し、ろう者から手話を教えてもらいながらコミュニケーションをとっていきます。ガンバレルーヤのよしこはチームメイトから、東京と京都の手話が、手の動きが逆になることを教わると、興味深そうに驚いていました。また井上も、フック船長のかぎつめの形に指を折り曲げると手話で「海賊」を意味すると、子どもから教えてもらい「すごくわかりやすい。意味がわかると覚えやすい」と感心していました。
続いて、出題芸人たちも手話を交えて自己紹介。はるかは重要な役どころがあると誇らしげに挨拶しますが、河本からは「骸骨だろ」と茶々を入れられ笑いを誘います。
ゲームが始まると海賊団「ガレッジ」の船員に扮したしずるが登場。手話を駆使しながら謎解きのルールを説明していきます。テーブルでは筆談などはできますが、謎解きのために席を離れると、そこからは手ぶらでのコミュニケーションだけで、ろう者と聴者の意思疎通を図ります。
ゲームの内容も手話がわかるろう者にしか解けない問題であったり、音が聞ける聴者でしか得られない情報があったり、二者が協力し合わなければクリアできない難題ばかり。芸人たちも身振りや、口の動きで、考えを伝えようと必死にコミュニケーションを取りにいっていました。
今回の新作はなかなかの難易度の高さだったようで、最後まで謎が解けたのはガンバレルーヤのまひろのチーム、ただ1組だけでした。まひろは「私は全然わからなかったけど、みんなの力で頑張りました」と、チームが団結してクリアできた喜びを噛みしめました。最後に謎解きが難しすぎると嘆き節だった河本ですが「手話でコミュニケーションをとって異文化交流することで、世界でも同じようにコミュニケーションがとれることになるので、これからもみんなで楽しい体験をしていきましょう」と、言葉を超えたコミュニケーションの大切さを話しイベントを締めました。
以前にも京都で異言語脱出ゲームを体験済みだという河本ですが「京都でのレベルをはるかに超えてきたので、コミュニケーションの前に、問題を解くのに必死だった」と、子ども騙しではないゲーム内容に苦戦した様子。その上で、コミュニケーションの大切さが身にしみたようで「筆談ではなく、分かりやすく口で動かすとか、丁寧にならないと伝わらない。健常者同士でも適当なコミュニケーションの取り方が問題視されるので、あらためて人に伝える時には丁寧にするべきだと思いました」と、今後の日常生活でも今日の経験が活かされると感じたようです。
よく謎解きゲームに行くという井上は「解き方はわかっていても、解き方を伝えられないことに難しさを感じました」と話し、なんとかうまく伝わった時の両者の笑顔が素晴らしかったと語りました。また、出題芸人として進行役を務めたしずるのふたり。池田は「問題が単純に面白くて、チームワークが重要な部分などを見ていると、面白いゲーム考えたなと思いました」と、異言語Lab.の仕事ぶりに感心していました。
村上は今回一緒に進行したろう者の方が、口が達者なくらい手話がうまいと絶賛し「ダメですね、僕らが遠慮しちゃ。喋らないようにするのではなく、喋ってコミュニケーションとらないといけない」と、変に遠慮して引っ張られることなく、対等にコミュニケーションを取ったほうがいいと熱弁していました。問題が難しくなかなか出番が来なかった箕輪は「最後のキーパーソンとして待っていたけど、とにかく誰も来ない」と恨み節。でもその待ち時間にろう者の方から手話を教えてもらって良かったと話し、河本も箕輪の手話がうまかったと褒めつつ「相当(練習の)時間があったんだな」と、皮肉を交えながらも太鼓判を押しました。