レポート2019.04.19新時代のインターフェースで次のヒット作を生み出せ!板倉俊之×佐渡島庸平の公開対談
4月19日(金)、那覇市の沖縄ラフ&ピース専門学校で、インパルス・板倉俊之と株式会社コルク代表取締役会長の佐渡島庸平さんとのトークショー「次のヒットを生み出す、作品のつくり方」が行われました。
佐渡島さんは編集者として『バガボンド』『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』を担当するなど数々の人気タイトルを手がけてきた人物です。板倉は『トリガー』『蟻地獄』『機動戦士ガンダム ブレイジングシャドウ』といった小説を発表するなど、作家としても活動しています。
今回のトークショーでは、編集者と作家の両方の視点から、作品との向き合い方、ヒットする作品づくりへのアプローチなどをディスカッションしました。冒頭から漫画とテレビ番組の共通点で、販売数や視聴率などの“数字”で打ち切りが判断されると嘆き節から始まりました。板倉は「面白いと思って作っていても、売れないとギャラが払えなくなる。だから、面白いと思ったら買わなくちゃいけない」と客席に投げかけました。
「売り方を知らなくて埋もれている、優れた作品がいくつあるんだ」と話し始めた板倉に、いっぱいそういう作品があると共感する佐渡島さんは「板倉さんがしっかり小説書いてるって知らなかった。どれもすごい読み応えがあった」と、板倉の作品を高評価。さらに板倉の作品がミステリーなどストーリー展開を意識して、構造的に作られていると分析していました。
一方、佐渡島さんは漫画家と打合せするときに、この物語で読み手をどういう感情にさせるかを決めると話し、『宇宙兄弟』では1話ごとにしっかりと受け取る感情がある短編でありながら、単行本でも大きな感情を受け取るような、二重の構成の物語を売れても続けようと作者と約束していたエピソードを披露。その上で、板倉の作品がもつ構造美に加えて、コントづくりにも共通する“感情を与える装置”を足すとさらに売れるとアドバイスしていました。
すでに売れる作品のフォーマットは出来上がっていると話す佐渡島さん。決まっている型を、それを新しいインターフェースを通して再構築することに、次のヒットを生む可能性があるといいます。さらに自分の経験を分析して、経験者にしかわからない感覚を作品に盛り込むことで、既存の作品にはないリアリティのある新しい作品が出来上がると話しました。
最後に会場に集まったお客様からの質疑応答の時間が設けられ、沖縄ラフ&ピース専門学校の生徒から、作品のキャラクターの魅力を引き出す方法を問われました。佐渡島さんは1話目でキャラクターの魅力を打ち出すことが重要と明言。『宇宙兄弟』では1話目の完成までに1年かかった裏話を明かすと、板倉も思わず声を出して驚愕。売れる作品は少なくとも1話目をつくるのに、半年から10カ月も作家と打ち合わせて作り込むといいます。
最後に板倉は、例えばお笑い界には松本人志、漫画界には手塚治虫など、それぞれ既存のジャンルには数多くのトップがいて、さらにジャンルは出し尽くされていると話し「新しいジャンルごと生み出せたら、人は大成すると思う」と語り掛けました。佐渡島さんも「手塚手塚治虫さんのときに貸本から連載漫画に変わって、今はスマホのコンテンツとして新しいジャンルを生み出すタイミング。それに挑戦している漫画家がいるのか」と投げかけます。板倉も「紙で読む前提で作ってスマホでも見られるのが今の作り方だけど、スマホで見られる前提で作り始めると強いだろうね」と続き、時代にあったジャンルを生み出す必要性を説いてトークショーを締めました。